「巻ちゃぁぁぁん!」
あー。
電話の向こう。巻島は眉間にしわを寄せた。
「聞いてくれ!
今日は西野さんが練習を見に来てくれたのだよ!!」
「おめー本当に、その子好きすぎっショ?」
「は?」
心底疑問に思ってる声が受話器から響いた。
「切るっショ」
「なぜだ!―――プツッ
巻ちゃん!?」
その日西野が自転車部の練習を見に来たのは偏に友達の為であった。友人は自転車部に彼氏がいた。それだけのこと。
友人の彼氏はどうやら”クライマー”と呼ばれるポジションで、山の頂上が見学のベストポジションらしい。
西野はそんなことを聞きながら、その日の練習で通る山の山頂へ向かう。そこにはすでに人がいた。
どこかで見たようなそうでもないような。そんな女の子たちがたくさんいた。
「すごい人だね」
「東堂君のファンクラブじゃないの?」
「あー・・・」
漏れ出た声に、友人は”興味なさそう”と苦笑い。
実際は西野は興味がないわけではなかったが、周りの女子たちの熱量に圧倒されてしまっただけだ。
女の子たちの隣、静かに二人は坂の下を見つめる。
―――キャァァァァ
女の子たちから歓声が上がり、態々見る必要もなかったと西野は感じた。自分より彼女たちのほうがよっぽど早く選手を見つけた。
遠くには米粒のような人影が見える。
彼女たちの言葉を信じるのなら、あれは東堂であるのだろう。また、夕実の彼氏はレギュラーではないと言っていたからもう少し後にくるのだろう。声に眉をひそめながら西野はそう考えた。
「早い・・・」
そんなことを考えているうちに、東堂はあと少しの所まで登ってきていて。予想外の速さに愕然とする。
「あ・・・・」
すれ違う一瞬。東堂と西野の目が合った。
東堂が嬉しそうに笑ったのは見間違いだろうか。どうして彼の周りに人が集まるのかは分かった気がする。
自然と手を下して、目線は彼の背を追った。
いつも教室で話しかけてくる彼とはずいぶん印象の違う、静かな背中だった。
「かっこいいじゃん」
「えー」
「なんでもない」
女の子たちの歓声で聞こえなかったのだろう。西野を見上げた友人であったが、東堂達レギュラーより遅れて上ってきた自身の彼氏にすぐに視線を移した。
珍しく西野の視線は友人ではなく、東堂が登って行った山頂を向いていた。
(2015/01/01)
(2023/06/20 加筆修正)
あー。
電話の向こう。巻島は眉間にしわを寄せた。
「聞いてくれ!
今日は西野さんが練習を見に来てくれたのだよ!!」
「おめー本当に、その子好きすぎっショ?」
「は?」
心底疑問に思ってる声が受話器から響いた。
「切るっショ」
「なぜだ!―――プツッ
巻ちゃん!?」
03.もしもし、一歩進んだかもしれません
その日西野が自転車部の練習を見に来たのは偏に友達の為であった。友人は自転車部に彼氏がいた。それだけのこと。
友人の彼氏はどうやら”クライマー”と呼ばれるポジションで、山の頂上が見学のベストポジションらしい。
西野はそんなことを聞きながら、その日の練習で通る山の山頂へ向かう。そこにはすでに人がいた。
どこかで見たようなそうでもないような。そんな女の子たちがたくさんいた。
「すごい人だね」
「東堂君のファンクラブじゃないの?」
「あー・・・」
漏れ出た声に、友人は”興味なさそう”と苦笑い。
実際は西野は興味がないわけではなかったが、周りの女子たちの熱量に圧倒されてしまっただけだ。
女の子たちの隣、静かに二人は坂の下を見つめる。
―――キャァァァァ
女の子たちから歓声が上がり、態々見る必要もなかったと西野は感じた。自分より彼女たちのほうがよっぽど早く選手を見つけた。
遠くには米粒のような人影が見える。
彼女たちの言葉を信じるのなら、あれは東堂であるのだろう。また、夕実の彼氏はレギュラーではないと言っていたからもう少し後にくるのだろう。声に眉をひそめながら西野はそう考えた。
「早い・・・」
そんなことを考えているうちに、東堂はあと少しの所まで登ってきていて。予想外の速さに愕然とする。
「あ・・・・」
すれ違う一瞬。東堂と西野の目が合った。
東堂が嬉しそうに笑ったのは見間違いだろうか。どうして彼の周りに人が集まるのかは分かった気がする。
自然と手を下して、目線は彼の背を追った。
いつも教室で話しかけてくる彼とはずいぶん印象の違う、静かな背中だった。
「かっこいいじゃん」
「えー」
「なんでもない」
女の子たちの歓声で聞こえなかったのだろう。西野を見上げた友人であったが、東堂達レギュラーより遅れて上ってきた自身の彼氏にすぐに視線を移した。
珍しく西野の視線は友人ではなく、東堂が登って行った山頂を向いていた。
(2015/01/01)
(2023/06/20 加筆修正)