「もしも「巻ちゃんグラビアを貸してくれ!」・・・は?」
確か東堂はグラビアなど興味がないと豪語していたはずだと思いだす。
「・・・何があったショ」
「西野さんが・・・」
問えば、ここ数日ですっかり聞きなれた女の名前が挙がった。どうでもいい理由と判断した巻島は隠すこともせずに大きくため息をついた。
「イヤっショ」
「なぜだ!」
東堂の”友達になってくれ”宣言から早数日。
ファンクラブからいやがらせの一つでもあるかと西野は心配していたが、杞憂に終わり存外穏やかな時間を彼女は過ごしていた。
派手そうなイメージから邪険にしすぎたかな。
そう彼女が思うのに十分なほど、東堂も、その周りも必要以上に騒がない。
「おはよう!」
「・・おはよ」
ゆえに、東堂の挨拶に西野はうすく笑う様になっていた。
それから始まる今日の朝練の報告ももうすっかり慣れてしまった。人とは随分適応力があるものだと、西野は頭の隅でそんなことを考える。
別に東堂自体は(鬱陶しい所もあるが)悪い奴ではない。
友達になりたいだなんて、まっすぐに言うからちょっと恥ずかしかっただけなのだ。
「で、今日も大変だっ―――おおっ!靖友ではないか!」
突然東堂が扉に向かって声を上げる。そこには黒髪のがらの悪そうな男が一人。
東堂の隣、西野が軽く手を上げると荒北はドスドスと彼女に近づいた。西野が手をあげた事には気づかず東堂は自身に近づいてきたのだと、笑顔を荒北へと向ける。
「ん、あぁそういえばお前も同じクラスだったかぁ?」
その荒北の言葉で自身に会いに来たのではないのだと東堂は察した。
ならば誰に会いに来たのだろう。
東堂の知る限り、荒北の交友関係は広くはなかった。
「あれ?東堂君って荒北と知り合いなの?」
予想外の言葉に、東堂は驚きに目を見開いた。しかも、東堂の事は”君”付けで呼んだにも関わらず、荒北は呼び捨てであった。
荒北を見る彼女の表情は、明らかに気安いものだ。
「俺もこいつも自転車部だロ」
「あれ?荒北ってそうだっけ」
いいながら、西野は首を傾げた。
いや、あまり親密ではないのか?
そう東堂も首をかしげる。
「ま、いいや
あんたが来たのは”コレ”でしょ?」
そうあっさりその話題を切り捨てた西野は机の中から一冊の本を差し出した。
東堂の目の前彼女の机から出されたのは―――一冊のグラビア雑誌。
「はい」
半ば投げながら彼女は本を荒北へと渡した。
「おう・・・・どうだったァ?」
「は?」
「かわいかったよ
特に13ページの水着のグラビアが際どくていい」
「え?」
「はー、お前本当に女子かョ」
「いや、お前が聞いたから答えただけだし」
何の話をしているのだろう。
あれがいいこれがいいと、東堂の前で繰り広げられる会話は、正直東堂にとっては異次元だ。
彼はグラビアのようなものを好んではいない。
「どういう事なんだ?」
「いや、グラビアだけど?」
ひらひらと東堂の前で振られたのは確かにグラビアだった。東堂には誰かも分らない女が表紙で微笑んでいる。
何もかもが自身の知る”女”とかけ離れている。東堂はどうしていいかわからなくなった。
もう、この会話に混ざればいいのか?
疎外感にそんなことまで考えた。
「(これ以上仲良くなれる気がしないのだよ・・・)」
「もしかして、東堂君も読む?」
「あ、「いや、それはねェな
お前じゃねェんだからヨ」
「荒北って失礼だよね」
その時東堂は初めて、荒北に嫉妬した。
(2014/12/07)
(2023/06/20 加筆修正)
確か東堂はグラビアなど興味がないと豪語していたはずだと思いだす。
「・・・何があったショ」
「西野さんが・・・」
問えば、ここ数日ですっかり聞きなれた女の名前が挙がった。どうでもいい理由と判断した巻島は隠すこともせずに大きくため息をついた。
「イヤっショ」
「なぜだ!」
02.もしもし、グラビアを貸してください
東堂の”友達になってくれ”宣言から早数日。
ファンクラブからいやがらせの一つでもあるかと西野は心配していたが、杞憂に終わり存外穏やかな時間を彼女は過ごしていた。
派手そうなイメージから邪険にしすぎたかな。
そう彼女が思うのに十分なほど、東堂も、その周りも必要以上に騒がない。
「おはよう!」
「・・おはよ」
ゆえに、東堂の挨拶に西野はうすく笑う様になっていた。
それから始まる今日の朝練の報告ももうすっかり慣れてしまった。人とは随分適応力があるものだと、西野は頭の隅でそんなことを考える。
別に東堂自体は(鬱陶しい所もあるが)悪い奴ではない。
友達になりたいだなんて、まっすぐに言うからちょっと恥ずかしかっただけなのだ。
「で、今日も大変だっ―――おおっ!靖友ではないか!」
突然東堂が扉に向かって声を上げる。そこには黒髪のがらの悪そうな男が一人。
東堂の隣、西野が軽く手を上げると荒北はドスドスと彼女に近づいた。西野が手をあげた事には気づかず東堂は自身に近づいてきたのだと、笑顔を荒北へと向ける。
「ん、あぁそういえばお前も同じクラスだったかぁ?」
その荒北の言葉で自身に会いに来たのではないのだと東堂は察した。
ならば誰に会いに来たのだろう。
東堂の知る限り、荒北の交友関係は広くはなかった。
「あれ?東堂君って荒北と知り合いなの?」
予想外の言葉に、東堂は驚きに目を見開いた。しかも、東堂の事は”君”付けで呼んだにも関わらず、荒北は呼び捨てであった。
荒北を見る彼女の表情は、明らかに気安いものだ。
「俺もこいつも自転車部だロ」
「あれ?荒北ってそうだっけ」
いいながら、西野は首を傾げた。
いや、あまり親密ではないのか?
そう東堂も首をかしげる。
「ま、いいや
あんたが来たのは”コレ”でしょ?」
そうあっさりその話題を切り捨てた西野は机の中から一冊の本を差し出した。
東堂の目の前彼女の机から出されたのは―――一冊のグラビア雑誌。
「はい」
半ば投げながら彼女は本を荒北へと渡した。
「おう・・・・どうだったァ?」
「は?」
「かわいかったよ
特に13ページの水着のグラビアが際どくていい」
「え?」
「はー、お前本当に女子かョ」
「いや、お前が聞いたから答えただけだし」
何の話をしているのだろう。
あれがいいこれがいいと、東堂の前で繰り広げられる会話は、正直東堂にとっては異次元だ。
彼はグラビアのようなものを好んではいない。
「どういう事なんだ?」
「いや、グラビアだけど?」
ひらひらと東堂の前で振られたのは確かにグラビアだった。東堂には誰かも分らない女が表紙で微笑んでいる。
何もかもが自身の知る”女”とかけ離れている。東堂はどうしていいかわからなくなった。
もう、この会話に混ざればいいのか?
疎外感にそんなことまで考えた。
「(これ以上仲良くなれる気がしないのだよ・・・)」
「もしかして、東堂君も読む?」
「あ、「いや、それはねェな
お前じゃねェんだからヨ」
「荒北って失礼だよね」
その時東堂は初めて、荒北に嫉妬した。
(2014/12/07)
(2023/06/20 加筆修正)