Eternal Oath

「だって、珍しいっショ」
「何がだ?」

「東堂がそんなふうに女子に執着するの」

昨日の巻島との会話が東堂の中で思い起こされた。

04.もしもし、やっぱり恋かもしれません


「おはよう!今日もいい天気だな!」
「おはよ」

短いが、はっきりと目線の合った挨拶に東堂は満足感を覚えた。東堂は乱れた前髪を片手で直した。今日は彼女にどうしても確認したいことがある。

西野さん!」
「何?」
「その昨日なんだが」

あーだのえーだの、言葉が続かないのはなぜ練習を見に来てくれたのかと聞くことは格好が悪い気がしたからだ。
なぜ聞けないのか自分でもわからなかった。

「そう言えば」
そんな東堂を見て西野は思い出した。

「昨日の練習見に行ったよ
東堂君すごいんだね」

なんてことないかのように西野は笑う。
東堂の動きがぴたりと止まった。言いたいことを言って満足したのか西野は授業の準備をしながら東堂の言葉を待つことにした。
一方東堂は完全なキャパシティオーバー。所在無さ気な手が首筋をさすった。見に来てくれて嬉しかっただの、君がいたからがんばれただの、東堂らしいセリフが浮かんでは消え浮かんでは消え。

続かない会話に終了を覚え西野は携帯電話を弄り出しそうとした。はしと、その手を東堂が掴む。
え?なに何なの?なんて思ったのは西野だけではなく、クラスメイトの目線も二人に集中した。

「また、見に来て欲しい」

真剣な視線が西野を穿つ。体だけ半歩後ろへ引いた。こんな目線で見つめられたのは人生で初めてのことだった。
こくん。頷いた西野を見て、東堂はゆっくりと手を離した。掴まれた跡は、赤く、東堂が力を込めていたことが伝わる。
どうしてを考えるより、痛いが勝って彼女は跡をさすった。
いつもだったらすまないと言ったのかもしれないが、今日は東堂にその余裕はなかった。


だって、彼女は東堂を見て感動したと言った。


「俺は必ずインターハイで優勝する」
「目標、なんだ?」
大きなものを追う姿。だからあんなに感動したのかと西野は納得した。
その情熱は自分にはないものだから。


「ああ」

大きくはっきりと頷いた東堂に、西野は手の痛みは許してやろうと思った。きっと、インターハイで見ることのできる東堂はもっと感動するのだろう。
何事にも頓着のない西野にとって、それはとても羨ましいことで、感じてみたいものだった。

「じゃあ見に行くよ」

故に西野はにへらと笑った。
初めて見るそれはすとんと東堂の心に落ちて。ああ、俺は西野さんが好きなのだな。そう考えるのには充分すぎるくらい充分に時の流れはゆっくりと東堂に感じられた。

「巻ちゃんの言った通りだ」

巻ちゃん?訪ねた西野に友達だと答えて、東堂はいつも通りに戻った。

「今年のインターハイって箱根だったっけ?」
「ああ」
「見に行くよ」

そしてまた、落とす様な笑みを一つ。

西野さんが応援してくれるのなら百人力だな!」

箱根の山頂に、優勝以外の目標がもう一つ。



(2016/03/08)
(2023/06/20 加筆修正)