00.侍道4―ローラ男主シリーズ― Log
名前を呼んで(2017/01/23)
昨日まで権兵衛を名乗っていた男が突然大久保某と名乗る時代、名前など金二両程の価値しかない。そう、それ程に取るに足らなく意味の無いものだ。
「お侍様」
まるで農民や商家の娘のようにローラはそう彼を呼ぶ。
身分を買った俄は身分で呼ばれる方が喜ぶのだと一体どこで覚えたのだろう。
「ローラ」
もっとも、ローラは少女でその上異人ときているからそんな事など考えてはいないのかも知れない。ただ男にとって、最初は得意になったその呼び名も今は煩わしいだけであった。
彼女は英国公使だ。本来ならば話しかける事が許された事だけで感謝しなければならないことは分かっている。
「名前で呼んじゃアくれねェか」
しかし、思うのだ―――自分が侍で無かったら彼女は名を呼んでくれたのだろうかと。
昨日まで権兵衛を名乗っていた男が突然大久保某と名乗る時代、名前など金二両程の価値しかない。そう、それ程に取るに足らなく意味の無いものだ。
「お侍様」
まるで農民や商家の娘のようにローラはそう彼を呼ぶ。
身分を買った俄は身分で呼ばれる方が喜ぶのだと一体どこで覚えたのだろう。
「ローラ」
もっとも、ローラは少女でその上異人ときているからそんな事など考えてはいないのかも知れない。ただ男にとって、最初は得意になったその呼び名も今は煩わしいだけであった。
彼女は英国公使だ。本来ならば話しかける事が許された事だけで感謝しなければならないことは分かっている。
「名前で呼んじゃアくれねェか」
しかし、思うのだ―――自分が侍で無かったら彼女は名を呼んでくれたのだろうかと。
君に一輪の花を(2017/02/14)
「ローラ」
侍の男は手に見慣れないモノを持って彼女を手招きした。 呼ばれた少女が不思議に思いながら近づくと、ソレは飴細工だと分かったが、なんで飴細工?
「お前にやる」
「良いのですか?」
「ああ、もちろん」
「ありがとうございます!」
彼女は自分への贈り物だと理解すると、一見しただけでは食べ物だとは分からない見事な薔薇の一輪を、壊れ物の様に丁寧に受け取った。
綺麗で、美しくて、美味しくて、飴細工はこの国で見つけた宝物だとそう話したのを彼は覚えていたのだろう。 でも、突然なんで?
「七蔵様?」
以前呼んでくれと請われた、彼の名を片言に発音する。途端、茂呂の如く頭を掻いて空を見つめていた七蔵の瞳が、くっとローラに向けられた。
「Be My Valentine.」
「え?」
「本当はカードを付けるべきなんだろうけど
―――まだ、英語は書けねぇから」
笑う彼の顔は、ほんのりと朱に染まっていた。
「ローラ」
侍の男は手に見慣れないモノを持って彼女を手招きした。 呼ばれた少女が不思議に思いながら近づくと、ソレは飴細工だと分かったが、なんで飴細工?
「お前にやる」
「良いのですか?」
「ああ、もちろん」
「ありがとうございます!」
彼女は自分への贈り物だと理解すると、一見しただけでは食べ物だとは分からない見事な薔薇の一輪を、壊れ物の様に丁寧に受け取った。
綺麗で、美しくて、美味しくて、飴細工はこの国で見つけた宝物だとそう話したのを彼は覚えていたのだろう。 でも、突然なんで?
「七蔵様?」
以前呼んでくれと請われた、彼の名を片言に発音する。途端、茂呂の如く頭を掻いて空を見つめていた七蔵の瞳が、くっとローラに向けられた。
「Be My Valentine.」
「え?」
「本当はカードを付けるべきなんだろうけど
―――まだ、英語は書けねぇから」
笑う彼の顔は、ほんのりと朱に染まっていた。
俺が嫌いなお前(2017/02/22-03/05)
「おお! !ちょうど良いところでであった」
俺は、こいつが苦手でしかたがねぇ。 いっつも真一文字に結ばれた口元も、やたら愚直な性格も、こいつが武士だと思い知らされる。
俺とは、違う。
そして、何より一番気にくわないのは。
「琴吹様」
そう呼ぶ笑顔の少女だった。
「おお! !ちょうど良いところでであった」
俺は、こいつが苦手でしかたがねぇ。 いっつも真一文字に結ばれた口元も、やたら愚直な性格も、こいつが武士だと思い知らされる。
俺とは、違う。
そして、何より一番気にくわないのは。
「琴吹様」
そう呼ぶ笑顔の少女だった。