Eternal Oath

それが指し示すものは同じなのに。

違う音


巻島はグラビア目当てで雑誌を買う。そして、読み終わると捨てる。
瑞樹の目的はその雑誌の漫画だった。大好きな作家が連載しているが、その作品以外に読みたいものもなく。買おうかどうか悩んだ雑誌を捨てている巻島はまさに渡りに船であった。

クラスが変わっても、雑誌の発売日の翌日だけは巻島にあいに行った。
今日はまさに雑誌の発売日の翌日。早速巻島から今週号を手に入れた。

巻島の前の席に無断で座ると、漫画を読み始める。
ペラペラと規則的に紡がれていた音が、ぴたりと止まった。


「んー」
「何奇声あげてるっショ」


”奇声”と言う言葉が気に触り、瑞樹は顔をあげる。巻島はグラビアを眺めたままだ。思わず言ったようだ。
この男にデリカシーを求めてもしょうがない。そう思い直し、漫画に視線を戻す。


「いや、この漫画でさぁ
主人公とヒロインが付き合い始めたんだけど、途端に名前呼びになったから」
「別に変じゃないっショ」

「いや、そーいや私付き合った男のこと名前で呼んだことないなぁって」


その言葉に飲みかけていた水が器官にはいる。ゴホゴホ咳き込む巻島に呆れたように瑞樹は息をついた。


「・・・瑞樹って、付き合ってる人いたんショ?」
「そりゃ、彼氏の一人や二人・・・っ



こめん、嘘です
一人いただけです一年以上前に」


引っ張られた雑誌に、瑞樹は本当のことを話した。
話した途端離された雑誌。勢い余って、背もたれに肘を強打したのは御愛嬌。

クハッと独特の笑い声を漏らす巻島を軽く睨みつけ、瑞樹は残りのページに視線を戻す。


「ねえ、巻島」
「・・・なんショ」
「名前で呼ばれたら嬉しい?」


小首をかしげて聞く。巻島はばっかじゃねぇの?と言いたげに眉間にしわを寄せた。


「うわ、ムカつく顔ー」
「お前がアホなことばっかり言ってるからだろ・・・ショ」

「ちぇーっ」


頬を膨らませ、瑞樹は視線を落とす。漫画はとっくに読み終わり、巻島も眺めただろうグラビアへページは移っていた。
この子豊胸したんだってね。
と、ネットか何かで見た知識をもらすと、夢を壊すなと叱られた。


「裕介」


「・・・・・・は?」


思わず声をあげる。目の前の女からでた発言が信じられなくて。
そんな巻島には目もくれず、あいかわらず瑞樹は雑誌に視線を落としていた。


「ときめいた?」
「んなワケ・・・ないっショ」

「だよねぇ」


やっぱり可愛い子じゃないとダメか。
瑞樹にとっては、アイドルの豊胸手術と同じ程度の話題。へらりと笑って、こういう子が言えばいいのか、などと写真をなぞる。

巻島は熱くなった顔を隠すように耳にかけていた髪をおろす。

いよいよ最後の写真をを読み終えると、瑞樹は雑誌を閉じた。今度こそこの雑誌はゴミ箱行きだ。


(2014/11/25)