Eternal Oath

00.侍道4 Log

薄荷侍※男主(2017/05/08)


ついこの間まで新春だなんだ騒いでいたのが嘘のようだ。日は高く、熱く、初夏の様相を呈している。
湿度の高い暑さにやる気も起きず、代官所の縁側にて、茂呂は帽子を扇子代わりに涼んでいた。もっとも涼しくとも、真面目に働く気など毛先程もないが。
「あちぃー」
言いながら仰いだ風も、周囲の熱気で生ぬるい。ああ、冷たい水がのみてぇな、なんて思いコロンと横になる。日陰の床板は少しだけ冷たかった。

「茂呂、見つけたぞ」
いっそ夕方まで寝てしまおうかと茂呂が目を閉じた途端、そんな声が聞こえた。
「おお、お前さん か」

「・・・琴吹に叱られるぞ」
「おいおい、おっさんに言われて来たのか?」
こんな暑い中働きたくない。そんな気持ちを隠そうともせず、茂呂は右手を支えに半身を起こし、頭を掻きむしった。


「違う。商売を」
「商売だァ?」
よく良くその姿を見直せば、桶など担いで成程商人の様相だ。
しかし、一方でその表情は眉も口も真一文字、とてもじゃないが商売人には見えない。 そのあべこべさにぷっと茂呂は吹き出した。

「おい」
「悪ぃ悪ぃ で、何を売っているんだい?」

「冷水を」
茂呂は渡りに船とはこのことだとは思ったが、その値段を聞き驚いた。
「6文だぁ!!?」
茂呂が思わず大声を出すのも無理はない。冷水に6文。相場よりかなり高い値段だった。

「いいから飲んでみろ」
「冗談だろ・・・」
武綱が知人であったこと、また、先に笑った気まずさもあり、ままよと茂呂は6文を手渡した。


そして、口付けた水に茂呂は驚き納得する。
ただの冷水ではない。飲めばすぅと芯から冷えるようだった。
「こりゃ薄荷、か」
「正解だ」
したり顔の武綱に、再び茂呂は吹き出す。こいつ程商人に向かないやつも中々いないだろう。


「悪かねぇが、これじゃ売れねぇだろ」
「む・・・」
途端、武綱は、再びの真一文字。


「よし、俺が商売のイロハを教えてやろう」
体も冷えたことだし、面白くもない机仕事よりかはこの侍について行く方が面白そうだ。 よいしょと地に足を下ろし、体を伸ばす。 軒下より見上げた空は高く青かった。