00.侍道3 Log
天晴武者心なんて言わないで(2017/01/13)
そいじゃ、あたしがやりましょう。
子供が使いにでも行く様な軽やかな声色に信之助は我が耳を疑った。今は戦の真っ只中で旗色の悪い藤森軍が撤退を決め、その殿を誰が務めるかを話していたところだ。殿はもっとも危険であり、その上腕が立つものしか務められぬ役目だ。
誰も主膳の為に命など掛けたくはないが、それなりの腕がある者が殿をせねば軍は大打撃を受けるだろう。命はかけたくないが敵に撃たれるのも嫌だ。 八方塞がりの中白羽の矢が立ったのは、桜井三本刀の一人であった過去から未だ信頼が薄く、けれども実力は折り紙つきである 信之助。
ここは梅宮殿にお任せしようと、話がまとまりかけていた。
「瑞樹、お主」
場にそぐわない笑顔を浮かべていたが爛々と目だけは輝いており、目が合えば止めと言わんばかりに頷かれる。嫌でも聞き間違いでは無いと思い知らされた。
やはり腕は立つが新参者である に、異議無しと言うことでとそそくさと将校達は主膳へ報告に行ってしまった。
「いやだね、信さん あたしが庇ったとでも思っているのかい?」
庇いたてでなくて何と言うのだろう。あのまま行っていれば殿は信之助になった。
「あたしはね、なんの因果かお天道様から剣の才をいただいて こうして二本差しでお飯を食わせていただいてるけどね 心ん中にはなぁんにも」
とんと、心の臓付近を指で刺される。どこか寂し気に伏せられた目がやけに印象的だった。
「これから先は心ん中に何かを持っている人だとあたしは思う
信さんが作る未来ってやつは楽しみだねぇ」
まるで信之介の胸の内を知っているかのように、揚々瑞樹は笑って見せた。
そいじゃ、あたしがやりましょう。
子供が使いにでも行く様な軽やかな声色に信之助は我が耳を疑った。今は戦の真っ只中で旗色の悪い藤森軍が撤退を決め、その殿を誰が務めるかを話していたところだ。殿はもっとも危険であり、その上腕が立つものしか務められぬ役目だ。
誰も主膳の為に命など掛けたくはないが、それなりの腕がある者が殿をせねば軍は大打撃を受けるだろう。命はかけたくないが敵に撃たれるのも嫌だ。 八方塞がりの中白羽の矢が立ったのは、桜井三本刀の一人であった過去から未だ信頼が薄く、けれども実力は折り紙つきである 信之助。
ここは梅宮殿にお任せしようと、話がまとまりかけていた。
「瑞樹、お主」
場にそぐわない笑顔を浮かべていたが爛々と目だけは輝いており、目が合えば止めと言わんばかりに頷かれる。嫌でも聞き間違いでは無いと思い知らされた。
やはり腕は立つが新参者である に、異議無しと言うことでとそそくさと将校達は主膳へ報告に行ってしまった。
「いやだね、信さん あたしが庇ったとでも思っているのかい?」
庇いたてでなくて何と言うのだろう。あのまま行っていれば殿は信之助になった。
「あたしはね、なんの因果かお天道様から剣の才をいただいて こうして二本差しでお飯を食わせていただいてるけどね 心ん中にはなぁんにも」
とんと、心の臓付近を指で刺される。どこか寂し気に伏せられた目がやけに印象的だった。
「これから先は心ん中に何かを持っている人だとあたしは思う
信さんが作る未来ってやつは楽しみだねぇ」
まるで信之介の胸の内を知っているかのように、揚々瑞樹は笑って見せた。
雨と侍(2017/08/30)
「入っていくか?」
しまったと思ったのは、それを告げた後だった。
朝から曇っていたのに何を考えたのか傘を持っていない瑞樹を、盗み見て信之助はため息をついた。隣を歩く瑞樹は、最近始めたと言う家庭菜園の話をしている。
こういう時に信之助は彼女をずるいと思うのだ。
「それにしても、信さんと相合傘なんて照れてしまうねぇ」
棒読みで、その上いつもと同じ表情で、冗談であることは明らかであった。
「・・・今度は傘を持ち歩け」
そうすればこんなことを考えずに済むのだろう。
「そうだねぇ でも、忘れたらまた信さんは迎えに来てくれるんだろう?」
やはり、瑞樹はずるい。
「入っていくか?」
しまったと思ったのは、それを告げた後だった。
朝から曇っていたのに何を考えたのか傘を持っていない瑞樹を、盗み見て信之助はため息をついた。隣を歩く瑞樹は、最近始めたと言う家庭菜園の話をしている。
こういう時に信之助は彼女をずるいと思うのだ。
「それにしても、信さんと相合傘なんて照れてしまうねぇ」
棒読みで、その上いつもと同じ表情で、冗談であることは明らかであった。
「・・・今度は傘を持ち歩け」
そうすればこんなことを考えずに済むのだろう。
「そうだねぇ でも、忘れたらまた信さんは迎えに来てくれるんだろう?」
やはり、瑞樹はずるい。