Eternal Oath

 決してそれが心地いいわけではない―――唯・・・いずれ首を落とせるのだと思うと愉快でしかたがないだけだ。

秋陽炎


「む、大和か」
「久しぶりだな、武藤の」
 武藤のは一瞬表情を曇らせると、それを鉄仮面で隠した。質実剛健を体で表したようなこの男のこと、どうやら私のような影は苦手らしい。そりゃあ、奉行に仇なすものを片っ端から斬って回る彼と、裏でこそこそと動く自分達とはだいぶ色が違うから仕方がない。

「任務帰りか」
 任務については同心とは言え機密事項だった。知っているのは奉行と、任務を指示する与力だけ。ゆえに、さてねぇと肩をすくめることで返事をした。

「相変わらずくえぬやつだ」
「そりゃぁねぇ
あんたとは違うだろうさ」
 忍が汲み易いのも問題下らないことばかり投げ掛ける武藤のに、少しばかりうんざりしたので会話を切り上げる。
 そもそも、この男が私を苦手なように、私もこの男が苦手であった。いや、男事態が苦手であると言っていいのだろう。諜報活動の度男に抱かれ、次第にそう感じるようになっていた。





「あら、ちゃん
おかえりなさい」


 でも、この男は苦手じゃない。


 甘い響きの男の声に振り替えれば、白粉に橙の着物の同心がたっていた。男という要素は感じないが、とてもじゃないが女には見えない人間が一人。
 これで、奉行所一の使い手だなんて誰が信じるのだろう。男はしなを作って私に近づく。


「ただいま、中村さん」
 もう距離は一間もないのに、中村さんは手を降った。
 女性らしい動作に、やっぱり男っぽくないと思う。あらあらと言いながら、割れ物に触るように頬をなぜられた。指先の擦れた所がピリピリと痛むから、きっと擦り傷か何かがあるのだろう。鏡なんて任務の前にしか見ないから気がつかなかった。

「女の子が傷を作っちゃだめよ」
「うん」
 指先の感覚が気持ちよく眼を細める。剣だこのある男の指だが、先に抱かれた男とは何もかもが違う。
 その指が私の手をひっぱって縁側へと導いた。
「本当は薬があればいいんだけれど」
 言いながら、中村さんは濡らした手拭いで傷を洗ってくれた。



「変な子ね、怪我して笑うなんて」

 無意識に笑っていたみたいで、中村さんが首を傾げた。



 触られてるのが心地いいから笑っただなんて、内緒だった。


(2023/12/06)