Eternal Oath

 悪夢だと、思った。

血溜まりの鵺


「嘘だろ」
 目の前の光景に、思わず半左衛門は言った。

 事の始まりは、数時間前、ふらりと侵入してきた素浪人が下っ端を一人斬ったことであった。二人目に刃を向けたところで京次郎が参戦し、そのまま一対一の勝負へとなだれ込んだ。命のやり取りをしてるというのに、くつくつと笑う二人の姿にぞっとするようなものを感じたのは半左衛門だけではなかったはずだ。
 それなりに腕に覚えはあるが、京次郎と戦って勝てるかと言われれば怪しいと半左衛門は理解していた。



 そして今その京次郎が畳に沈んでいる。
 赤く染まる井草が、決して軽いけがではないことを表していた。

「ははっ、お前名前は?」
 京次郎の頭を足で押さえつけて、素浪人の男は問いかけた。
 道でも聞くかのような軽さは、機嫌の良さを表している。陰沼京次郎と掠れた返答に、髪をつかみ上げて京次郎の顔を持ち上げた。
「ふーん、京次郎な」
 血濡れの女片手に、心底愉快に笑う男は狂っていると半左衛門は思った。薄気味悪さにとりはだが立つような気がして無意識に腕をする。
「あんたは?」
 流石に自分を倒した相手は気にかかるのか、京次郎が訪ね返した。
 笑顔のまま男は答えた。

朝倉 武綱
 敵陣の真ん中で堂々と名乗ってみせた。
 それでも、殺気のような異様な雰囲気に呑まれた半左衛門は動けない。いつか殺そうと思う人物録に、武綱という男が追加された。


「はは、ははは」
 そんな空気を破るように笑い声をあげたのは京次郎だった。


「あんた、気に入ったよ」
 どういう意味かは、半左衛門にはとても分からないし、わかりたくもない。武綱同様彼女も狂人だった。


「―――また、遊ぼうな」
 言いながら武綱は京次郎を蹴飛ばして走り出す。


「何見てやがる!殺せ!」
 そこで漸く半左衛門はそう声を張り上げた。青門組を嘗めさせるわけにはいかない。


「あいつ、私が殺すよ」
 ついでに言うと、天原にこれ以上狂人が増えるのはまっぴらごめんだ。
 死にそうな怪我で嬉しそうに笑うなと半左衛門は思った。


(2023/12/06)