「うさぎが1匹、うさぎが2匹、うさきが3匹」
なんでうさぎなんだよ。
だとか。
うさぎは1羽だろ。
だとか。
そんな事を考えながら眠りに落ちたのを今でも覚えている。
フィガロに戻ってからと言うものマッシュの寝つきはすこぶる悪い。その原因は未だに感じる皆のお客様扱いだったり、国王の補佐業務に慣れていないことだったり様々だ。
しかし、マッシュは気づいていた。一番の理由は父親の座っていない王座であり、兄でさなく国王となってしまった兄だと言うことに。
ふらふらとさまようマッシュがの目に止まったのは光がついたままのリズの部屋だった。まだ起きているのかと、足をその場にとどまらせる。
「マッシュ?」
しばらく佇む彼にかけられたのは、やわらかい女性の声。
しまったと。彼がそう思ったときにはすでに気づかれてしまった後で。
マッシュは部屋のなか小さな椅子に座らせられ、ホットミルクが提供される。
私も寝れなくて、なんてリズは困ったように笑った。
「眠れないの?
膝枕してあげよっか」
対峙するベッドに腰かけた彼女は軽く膝を叩く。いつまでも子供のつもりなのか、彼女は良くも悪くも昔と同じようにマッシュに接した。
むずがゆくもあるが不思議と居心地の悪さは感じなかった。
「もう子供じゃないんだぜ」
マッシュは若干の照れくささを隠してホットミルクに口をつける。
「ふふ、分かってるよ
でも人の体温って安心できるじゃない
ほら!」
リズは強引にマッシュの腕を引っ張った。もちろんその程度の力でマッシュが動かされることはないが、その強引さに負けゆっくりとリズの足へと頭を乗せた。
「そこまで言うなら失礼するぜ」
「どーぞ」
じんわりとした暖かさは確かに安心できるものだ。頭をなぜる手も母親のそれのようで心地いい。
しかし、当然彼女は母親ではない。感じるのは心地よさだけではなかった。目を閉じ、いつ立ち上がるかを思案する。
「・・・が1匹、うさぎが2匹」
そんな彼の耳に届く懐かしい言葉。
記憶よりも幾分か低くなった声。しかし優しい響きはそのままで。
「それ」
マッシュがリズの顔を見上げると、歌うように目を閉じてうさぎを数える彼女の顔。
膝の上の声に気づいたリズと目が合った。
「あ、うるさかった?」
「いや昔と一緒だと思っただけだ
・・・まだうさぎなんだな」
ひつじの代わりにうさぎを数えていた少女。
今でも彼女はひつじを数えない。
「変?」
「そりゃあな
普通ひつじだし、うさぎなら1羽、2羽だろ?」
変だけれどそれが彼女らしい。そういえば幼いころ彼女をうさぎの様だと思った気がする。
エドガーとリズと三人で走り回った砂漠を思い出しマッシュは微笑みを浮かべた。
「でもうさぎの方がかわいくない?
それにやっぱり数え歌は1匹2匹でしょ」
いたずらっぽく彼女は答える。
―――ならひつじを数えればいいのに
マッシュはそう言ったつもりだったがリズには届かなかった。なぜなら声は小さくほとんど音になっていなかったからだ。
「うさぎが3匹、うさぎが4匹―ふぁ・・・うさぎが5匹」
重くなった頭を撫ぜながら数えられたうさぎは、10を数える前に消えてなくなった。
(2016/02/29)
(2023/06/18 加筆訂正)
なんでうさぎなんだよ。
だとか。
うさぎは1羽だろ。
だとか。
そんな事を考えながら眠りに落ちたのを今でも覚えている。
三日月が笑う
フィガロに戻ってからと言うものマッシュの寝つきはすこぶる悪い。その原因は未だに感じる皆のお客様扱いだったり、国王の補佐業務に慣れていないことだったり様々だ。
しかし、マッシュは気づいていた。一番の理由は父親の座っていない王座であり、兄でさなく国王となってしまった兄だと言うことに。
ふらふらとさまようマッシュがの目に止まったのは光がついたままのリズの部屋だった。まだ起きているのかと、足をその場にとどまらせる。
「マッシュ?」
しばらく佇む彼にかけられたのは、やわらかい女性の声。
しまったと。彼がそう思ったときにはすでに気づかれてしまった後で。
マッシュは部屋のなか小さな椅子に座らせられ、ホットミルクが提供される。
私も寝れなくて、なんてリズは困ったように笑った。
「眠れないの?
膝枕してあげよっか」
対峙するベッドに腰かけた彼女は軽く膝を叩く。いつまでも子供のつもりなのか、彼女は良くも悪くも昔と同じようにマッシュに接した。
むずがゆくもあるが不思議と居心地の悪さは感じなかった。
「もう子供じゃないんだぜ」
マッシュは若干の照れくささを隠してホットミルクに口をつける。
「ふふ、分かってるよ
でも人の体温って安心できるじゃない
ほら!」
リズは強引にマッシュの腕を引っ張った。もちろんその程度の力でマッシュが動かされることはないが、その強引さに負けゆっくりとリズの足へと頭を乗せた。
「そこまで言うなら失礼するぜ」
「どーぞ」
じんわりとした暖かさは確かに安心できるものだ。頭をなぜる手も母親のそれのようで心地いい。
しかし、当然彼女は母親ではない。感じるのは心地よさだけではなかった。目を閉じ、いつ立ち上がるかを思案する。
「・・・が1匹、うさぎが2匹」
そんな彼の耳に届く懐かしい言葉。
記憶よりも幾分か低くなった声。しかし優しい響きはそのままで。
「それ」
マッシュがリズの顔を見上げると、歌うように目を閉じてうさぎを数える彼女の顔。
膝の上の声に気づいたリズと目が合った。
「あ、うるさかった?」
「いや昔と一緒だと思っただけだ
・・・まだうさぎなんだな」
ひつじの代わりにうさぎを数えていた少女。
今でも彼女はひつじを数えない。
「変?」
「そりゃあな
普通ひつじだし、うさぎなら1羽、2羽だろ?」
変だけれどそれが彼女らしい。そういえば幼いころ彼女をうさぎの様だと思った気がする。
エドガーとリズと三人で走り回った砂漠を思い出しマッシュは微笑みを浮かべた。
「でもうさぎの方がかわいくない?
それにやっぱり数え歌は1匹2匹でしょ」
いたずらっぽく彼女は答える。
―――ならひつじを数えればいいのに
マッシュはそう言ったつもりだったがリズには届かなかった。なぜなら声は小さくほとんど音になっていなかったからだ。
「うさぎが3匹、うさぎが4匹―ふぁ・・・うさぎが5匹」
重くなった頭を撫ぜながら数えられたうさぎは、10を数える前に消えてなくなった。
(2016/02/29)
(2023/06/18 加筆訂正)