見かけたのは、そう、偶然だった。1年生の冬。その日は合唱部の練習が随分長引いて、近道だと薄暗い坂道をかけ降りた。
かしゃん。
初めに聞こえたのは小さな音で。目を凝らせば、遠く、玉虫色。
「っ」
”隠れなきゃ”とっさにそう思い、道路脇樹木に隠れた。相当必死だったのだろう、私には気付かず、自転車で通り過ぎていく。
「巻、島、くん・・・だ」
見間違えようもない、奇抜な玉虫色。練習なのだろう。汗だくになって頂上を目指していた。その奇抜さとは裏腹な真剣さに―――私は恋をした。
それが一年とちょっと前。私は三年生になっていた。
「瑞樹はどーすんの?」
私は突然の言葉に首を傾げると、友人は呆れたようにため息をついた。ごめんごめんと、口先だけで謝ると、進路のことだと教えてくれた。
「まぁ、あんたは巻島の「あーーー!」」
とんでもないことを言い出した友達を慌てて止める。知らないわよ、と肩をすかせて、もう一度、どうするのと私に聞いた。
どうするもこうするも、私は彼の志望先すら知らないのだ。
「私は、国文科に進むよ」
そうじゃなくて、って?言いたいことは分かるけれど。私にどうしろと言うのだ。
また、彼女は呆れたようにため息をついた。
「こくはく、しないの?」
「無理無理」
笑ってぱたぱた手を振る私を、鋭い視線が射抜いた。
「無理ってそれじゃなんにも変わらないわよ」
そんな事は知っている(なんてたって片思い歴1年超だ)。それでも、告白などと考えるだけで、顔が赤くなるのを感じた。
そんな私を一瞥すると、彼女は首を振った。
私はそんな彼女から自転車部へ視線を移す。インターハイと言う大きな大会を目指す彼らは、学外でも走っているのだろう、部室に光はない。
いなかったから、なのかもしれない―――
「いっそ叫んでみたら?
発声練習みたいにさ
『巻島が好きだー!』って
そしたら勇気、でるかもよ」
「それも、いいかも」
―――普段だったら一蹴してしまうような提案に、私は頷いた。
土曜日の午後、しかも日の昏れたこんな時間に学内にいるのは先生ぐらいだろう。土曜日に部活動を行うのはここー合唱部ーと、自転車部くらいだ。
そして今、自転車部はいない。
だから、半ばやけくそのような。そんな気持ちだった。
すぅ、と息を吸って。発声練習の容量で。今なら赤い顔も、声も、誰にも知られない。
「私はー!」
人がいないため、思ったより声が響き、思わず黙りこむ。
背中を彼女に叩かれた。
「巻島君がー!大好きだー!」
あ、先生。
言い終わると同時に聞こえた友人言葉に、私はずるずると座り込んだ。
「うそ・・・」
「大丈夫。笑ってるから」
いや、そうゆう問題じゃない。
顔を抑えたまま言おうとした言葉は、音にならずに消えてった。
(2014/11/03)
(2023/06/18 加筆訂正)
かしゃん。
初めに聞こえたのは小さな音で。目を凝らせば、遠く、玉虫色。
「っ」
”隠れなきゃ”とっさにそう思い、道路脇樹木に隠れた。相当必死だったのだろう、私には気付かず、自転車で通り過ぎていく。
「巻、島、くん・・・だ」
見間違えようもない、奇抜な玉虫色。練習なのだろう。汗だくになって頂上を目指していた。その奇抜さとは裏腹な真剣さに―――私は恋をした。
断崖絶壁で愛をさけぶ
それが一年とちょっと前。私は三年生になっていた。
「瑞樹はどーすんの?」
私は突然の言葉に首を傾げると、友人は呆れたようにため息をついた。ごめんごめんと、口先だけで謝ると、進路のことだと教えてくれた。
「まぁ、あんたは巻島の「あーーー!」」
とんでもないことを言い出した友達を慌てて止める。知らないわよ、と肩をすかせて、もう一度、どうするのと私に聞いた。
どうするもこうするも、私は彼の志望先すら知らないのだ。
「私は、国文科に進むよ」
そうじゃなくて、って?言いたいことは分かるけれど。私にどうしろと言うのだ。
また、彼女は呆れたようにため息をついた。
「こくはく、しないの?」
「無理無理」
笑ってぱたぱた手を振る私を、鋭い視線が射抜いた。
「無理ってそれじゃなんにも変わらないわよ」
そんな事は知っている(なんてたって片思い歴1年超だ)。それでも、告白などと考えるだけで、顔が赤くなるのを感じた。
そんな私を一瞥すると、彼女は首を振った。
私はそんな彼女から自転車部へ視線を移す。インターハイと言う大きな大会を目指す彼らは、学外でも走っているのだろう、部室に光はない。
いなかったから、なのかもしれない―――
「いっそ叫んでみたら?
発声練習みたいにさ
『巻島が好きだー!』って
そしたら勇気、でるかもよ」
「それも、いいかも」
―――普段だったら一蹴してしまうような提案に、私は頷いた。
土曜日の午後、しかも日の昏れたこんな時間に学内にいるのは先生ぐらいだろう。土曜日に部活動を行うのはここー合唱部ーと、自転車部くらいだ。
そして今、自転車部はいない。
だから、半ばやけくそのような。そんな気持ちだった。
すぅ、と息を吸って。発声練習の容量で。今なら赤い顔も、声も、誰にも知られない。
「私はー!」
人がいないため、思ったより声が響き、思わず黙りこむ。
背中を彼女に叩かれた。
「巻島君がー!大好きだー!」
あ、先生。
言い終わると同時に聞こえた友人言葉に、私はずるずると座り込んだ。
「うそ・・・」
「大丈夫。笑ってるから」
いや、そうゆう問題じゃない。
顔を抑えたまま言おうとした言葉は、音にならずに消えてった。
(2014/11/03)
(2023/06/18 加筆訂正)